以下の事例を見ていきます。
【事例】
Aさんは会社を経営していましたが、生前に長男Bに対して株式全てを贈与し、経営を託しました。その際、会社の経営状態は赤字続きで当時の株式時価総額は0円に近いものでした。
その後、Bさんは引き継いだ会社を立て直しました。
そして株式の贈与後8年経過したときにAさんが亡くなりました。
相続人は長男B及び次男Cです。
Aさん死亡時の株式時価総額は1000万円にも達していました。
Aさんの財産はありませんでした。
CさんはBさんが受けた株式の贈与を特別受益にあたるとして遺留分侵害額請求権を行使しました。これは認められるのでしょうか?
【結論】
特別受益の評価は相続開始時を基準に判断されますから、本事例の場合Bさんは1000万円の特別受益を得たことになり、遺留分算定の基礎価額に1000万円が加算され、遺留分侵害額請求が認められそうですが、平成10年3月24日最高裁判決は以下のとおり説示し、一定の事情がある場合には遺留分侵害額請求の対象とならないとしています。
平成10年3月24日最高裁判決
民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となる。
全文→平成10年3月24日 最高裁判所第三小法廷 判決(PDF)
本事例でいうと、Bさんは自身の多年の努力による株価の上昇、そしてCさんは何ら経営に関与しなかったことなどを最高裁判例でいうところの「特段の事情」として主張立証して争うことが考えられます。
なお、Bさんが相続放棄をした場合はどうでしょうか。
この場合、特別受益としての扱いでは無くなるため、民法1004条が適用されます。
第1044条
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
Bさんとしては、株式の贈与を受けた当時、その株式に価値がなかったことを主張し、遺留分権利者に損害を加える認識がなかったことを立証して遺留分算定の基礎財産に同株式の参入を回避することができると考えられます。
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以下抜粋です。
学生アルバイトをめぐる問題においては、その未然防止を図るため各都道府県労働局が各
大学等と連携し、適宜対応を行っているところです。
この対応の一環として、厚生労働省においては、令和2年度においても、特に多くの新入
生がアルバイトを始める4月から夏休み前の7月までを実施期間として、「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で展開することとしました。
今回のキャンペーンでも、アルバイトを始める前の労働条件の確認を促すため、学生への
リーフレットの配付等による周知・啓発や、労働局による大学等での出張相談などを行います。
令和2年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンの概要
1 実施時期 令和2年4月1日から7月31 日まで
(特に多くの新入学生がアルバイトを始める時期)
2 重点事項
① 労働契約締結の際の学生アルバイトに対する労働条件の明示
② 学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトの適切な設定
③ 学生アルバイトの労働時間の適正な把握
④ 学生アルバイトへの商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
⑤ 学生アルバイトの労働契約の不履行等に対して、あらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止
不動産をAさんからBさんに、BさんからCさんに順次売却した場合、不動産の登記手続きとしては①AからBへの所有権移転登記 ②BからCへの所有権移転登記の2つを順次申請しなければなりません。
不動産の登記手続きは権利の変動順に忠実に行わなわなければならないからです。
例えば相続が発生し相続人がその不動産を売却する場合には、まず相続登記が必要なことと同じです。世の取引安全のための制度です。
新中間省略登記では権利変動を1つとする法律構成と執ることでAからCへの所有権登記を実現します。
新中間省略登記と謳ってありますが、いわゆる中間省略をしているわけではありませんので何ら違法ではありません。名称が不適切かなと感じます。
法律構成としては2パターンあります。
1つ目は
「第三者のためにする契約」
これはAB間で、Cに直接名義を移すという特約を盛り込んだ契約を用いて行う手法です。
第三者のためにする契約の典型例としては保険金の受取人を指定する生命保険契約などが挙げられます。
具体的には、AB間で「所有権を取得する者はBが指定する者とし、売買代金の支払いを条件としてAは本件不動産の所有権をBの指定する者に対し直接移転することとする。この条件が完成するまで、所有権はAに留保される」という特約付きで売買契約を締結します。
次にBC間で売買契約を締結します。Bは不動産の所有権者ではありませんのでこの売買契約は他人物売買(民法第561条)ということになります。このBC間の契約は必ずしも売買契約である必要はありませんが、売買である方がCの理解を得られやすいでしょう。またBが不動産業者であればBC間は売買契約となることが多いと思われます。
そしてCがその不動産の所有権を取得するという意思表示(受益の意思表示)を行い、CがBに、BがAに代金を支払うことによって、所有権はAからCに直接移転することとなります。
注意すべきはCが受益の意思表示をして所有権を取得したとしても、BからAに代金が支払われていなければAはCへの所有権移転登記手続きを拒絶でき(民法第539条)また契約内容に問題があったとして詐欺・錯誤等を考える場合もCは契約の当事者ではありませんが、当事者に準じた立場ということで第三者保護規定は適用されず、AはCに対し契約に関する瑕疵を主張することができます。
CはAB間の契約の信用性をよりいっそう確認する必要があり、代金の決済についても確認する必要があるということです。
実務上は同席または同時決済も多々あります。それぞれ代金決済が別日となる場合は取引安全のため特に注意が必要です。
(第三者のためにする契約)
民法第537条
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
※2は改正民法(最判昭37.6.26を条文化したもの)
(他人の権利の売買における売主の義務)
第561条
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
(債務者の抗弁)
第539条
債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
2つ目は
「買主の地位の譲渡」
これはCがBへ対価を払って買主の地位を譲り受けることです。
この契約は3者間で締結するか、またはBC間で契約したものをAが承諾するという形をとります。契約者としての地位がまるごと移転するわけですからBは買主としての地位を離脱し買主としての権利義務や契約内容はすべてCに引き継がれます。取引安全についてはAC間で考えることになります。またAB間の契約上の地位をCが引き継ぐためAB間の売買代金額をCが把握できることになります。
第539条の2
契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
※改正民法(これまでの通説を条文化したもの)
どちらを選ぶかは事案の性質によるかと思いますが、中間者が不動産業者の場合は取引安全のために「第三者のためにする契約」の選択を推奨します。
その理由の補足は下記をご覧ください。
新中間省略登記メリットは
①中間者への登録免許税が節約できる。
②中間者は不動産を取得しないので不動産取得税を節約できる。転売目的の場合、売却までの固定資産税も節約できる。
デメリットは
異時決済ではAに名義が残るためAが無断で他人に名義変更する危険が残ってしまう。
といったところでしょうか。
当事務所では取引安全を考慮した、そしてクライアントのご要望に沿うような契約書作成を承っております。また取引安全のための立会業務も当然行っております。
お気軽にご相談下さい。
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不動産を売却したら、売却益から取得費等の経費を差し引いた金額に対して譲渡所得税が課税されます。
つまり売却によって儲けが出ない場合は、そもそもこの税金を考える必要がありません。
譲渡益が生じる場合には、譲渡所得税、住民税・復興特別税が発生しますので、相続不動産中、数個だけ売却して現金を相続人で分ける場合などは譲渡益を出さないためにどの不動産を売却するのがよいのか、
また後述する制度を利用するためにはだれが相続人となる遺産分割が最適か検討しなければなりません。
親が亡くなり親所有の不動産を子が相続するとして以下記載します。
①子がその不動産に居住していた場合👇
3000万円の特別控除が適用できます。
すなわち売却金額から経費等を差し引いた譲渡所得からさらに3000万円を差し引くことができます。計算した結果、課税金額がゼロ以下であれば税金も当然発生しません。
制度の概要、要件は下記リンクをご覧ください。
②相続税が発生する場合はどのような制度があるか👇
相続税を取得費に加算できます。
すなわち譲渡所得から相続税額を差し引くことができます。
相続税は各相続人によって異なるので要検討です。
制度の概要、要件は下記リンクをご覧ください。
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 国税庁
③親の自宅が空き家だった場合はどのような制度があるか👇
一定の要件を満たせば3000万円の控除を受けることができます。
制度の概要、要件は下記リンクをご覧ください。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 国税庁
これら制度を踏まえつつ誰が相続するのが最適か検討する必要があります。
要検討案件については、提携している税理士とともにに検討していきますのでお気軽にご相談ください。
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先日、本社が鹿児島市谷山にある株式会社様から代表取締役住所の変更登記手続きのご依頼がありました。鹿児島市も幅広く対応しております。
この会社は6年前に新規会社設立のご依頼を頂いた会社です。
代表取締役の住所に変更があった場合、住所変更の登記手続きが必要です。
住所を移転してから2週間以内に行わなければなりません。
手続きを怠ると100万円以下の過料に処せられる可能性があります。
過料とは「科料」という刑事罰ではありませんので前科にはなりません。行政罰です。
2週間以内に申請しなければならないとあるが、2週間以上放置すると即座に過料が課されるのか👇
実際の流れとしては、
①法務局に登記申請書を提出する
②申請書の内容から、これまで登記手続きを怠っていたことを登記官が発見する
③登記官が裁判所に報告する
④裁判官が過料の処分を検討する
⑤過料に処すべきと判断した場合は過料決定通知書を発送する
となります。裁判官が裁量により決定します。
これまでに携わってきた法人登記の事例では、1年以内に登記をしていれば過料は課されていないようです。ただ裁判官の判断ですのでケースバイケースとなります。登記をしなかった期間が短くても過料通知が来た事例もありますし、長く放置しても通知がこなかったという事例もあります。
100万円以下とあるが実際いくらくらいなのか👇
金額も裁判官が判断します。放置期間が長ければ長いほど金額が大きくなる傾向です。これまでの経験では数年放置で3万円~10万円といった印象です。
誰が払うのか👇
過料決定通知書は会社の代表者個人宛に届きます。
代表者に支払い義務が発生します。会社の経費にはなりません。
この通知書が届くのは登記申請から数ヶ月後のようです。
会社代表者の住所に変更があったときはお早めに手続きを行なってください。
申請方法などお気軽にご相談ください。
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会社法
(変更の登記)
第915条
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
第911条
3 十四 代表取締役の氏名及び住所(第二十三号に規定する場合を除く。)
(過料に処すべき行為)
第976条
発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
商業登記規則
(過料事件の通知)
第118条 登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知つたときは、遅滞なくその事件を管轄地方裁判所に通知しなければならない。
結論からいうと、ギャンブルでできた借金であっても債務整理手続きは可能です。
まず任意整理について
問題なくできます。
任意整理とは債権者との話し合いによって無理のない返済計画に組みなおすことです。
これまでに相手方債権者との交渉の際に借金の理由などは聞かれたことがありませんし、また債権者としても合意内容どおりの返済があればよいと考えているのでしょう。
次に個人再生手続について
個人再生についても問題なく利用できます。
個人再生とは裁判所が関与する整理手続きです。
法律で定められた計算で導かれた金額まで負債を圧縮し、裁判所が関与して作成された返済の計画に従って返済していく手続きです。
個人再生は借金の原因による手続き利用の法律上の制限はありません。
民事再生法
(再生手続開始の決定)
第33条
裁判所は、第二十一条に規定する要件を満たす再生手続開始の申立てがあったときは、第二十五条の規定によりこれを棄却する場合を除き、再生手続開始の決定をする。
2 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。
(再生手続開始の申立て)
第21条
債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。
第25条
次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
一 再生手続の費用の予納がないとき。
二 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
三 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
四 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
最後に自己破産手続きについて
破産が認めらない「免責不許可事由」のひとつとして「浪費または賭け事で著しく借金をした場合」というものがあります。
破産法
(免責許可の決定の要件等)
第252条
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
インターネットには様々な情報が錯そうしており、「ギャンブルの場合は破産できない」としているサイトも見受けられますが、一律にそんなことはありません。
そもそも破産制度は多重債務者を救済するために古くから制度化されたものであり、やむを得ずに借金をした人もいれば、様々な誘惑に飲まれてしまったという人もいるところ、それぞの事情を勘案した上で特に問題が無ければ借金をゼロにするという法律です。
例えば仕事上のストレスでギャンブルをする場合もあれば、日々の生活においてどうしても収入が少なく立ち行かないためギャンブルに賭けてみてしまった、、その結果依存症にまでなってしまったという事例もあるでしょう。
人間、いろいろ事情があるものです。それを一律ギャンブルである一点で破産できないとするならばかえって破産制度そのものが意味のないものになってしまいます。
かといって一律に破産できるわけでなく、借金に至るプロセスと今後どう立ち直っていくのかを裁判所に提示し、「申立者について破産手続を適用してもよい」と裁判所に判断してもらう必要があります。
第252条
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
借金問題でお悩みでしたらお気軽にご相談下さい。
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遺留分とは相続において「遺産のうち最低これだけは取得できる」という法が認める相続人の権利です。
財産を遺す人である被相続人は本来自分の財産をどのように処分しようが、また遺言によって誰に相続させようが自由です。
たとえば次男にすべての財産を相続させるとする遺言も可能です。
しかし、「各相続人の遺産に対する期待や各相続人の被相続人の財産形成に対する貢献度を全く無視するわけにもいかないのではないか」という思想を具現化したものとして遺留分制度が認められていると解されています。
個人の尊重を重んじる憲法にはいささかそぐわないかもしれませんが、旧民法の遺留分制度がそのまま残されたこということは相続人間の平等という事柄も保護に値すべきと考えられたのだと思います。
誰がどのくらいの割合で遺留分を行使することができるのか👇
子供のみが相続人である場合
↓
1/2
子供と配偶者が相続人となる場合
↓
子供が1/4、配偶者が1/4
配偶者と直系尊属が相続人となる場合
↓
配偶者が2/6、直系尊属が1/6
直系尊属のみが相続人となる場合
↓
1/3
それぞれが相続財産に対して上記の割合に達するまで金銭を請求する権利を有します。
遺言書を作成される際には十分留意しておく必要があります。みすみす紛争を起こさないためにも肌感覚として「遺産争族」となりそうな場合は専門家に相談してください。
遺留分の対象となる財産はどのようなものか👇
相続発生後の相続分の指定や遺贈に限られません。
すなわち相続開始前1年以内に行われた贈与や遺留分を侵害する意図で行われた贈与は遺留分請求の対象となり得ます。
遺留分の権利はどのように行使するのか👇
遺留分権利者は受遺者または受贈者に対して侵害された遺留分に相当する金銭を請求する権利「遺留分侵害額請求権」を行使して金銭を受け取ることができます。
遺留分侵害額請求権を行使するかしないかは本人に任されています。行使しなければ時効になります。
また必ずしも裁判手続きを利用する必要はありません。
なお遺留分侵害額請求権を行使することができる相手方が複数存在する場合は、民法1047条の規定に従って行使します。
すなわち
①受遺者と受贈者が存在する場合→まず受遺者に対して行使します
②受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合でその贈与が同じ日時に行われた場合→その額の割合に応じてそれぞれに対し行使します
③受贈者が複数いて贈与の日時がそれぞれ異なるとき→相続開始日に近いほうから行使します
遺留分侵害額請求権はいつまで行使することができるのか👇
遺留分を行使する者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅します。相続開始の時から十年を経過したときも同様に時効消滅します。
また各相続人は被相続人の生前は家庭裁判所の許可を受けた場合に限り遺留分放棄の手続きをとることができます。
遺留分はあくまで相続人保護のための制度ですから放棄を認めるかの家庭裁判所の判断は以下の基準に従って厳格に行われます。
①自由な意思に基づいて行われたものであるか
他の相続人が脅して放棄させていたら大変なことです。
②遺留分放棄に合理的な理由と必要性があること
感情的な理由では不可となります。
③放棄の代償として経済的価値のある対価をうけていること
生前に十分な援助を受けていた場合などが該当します。
そして遺留分の放棄は一度行うと原則として撤回はできません。
ただし撤回を必要とする特別な事情がある場合は家庭裁判所の許可を得て撤回できる可能性はあります。
遺留分を行使できない人とはどのような人か👇
①兄弟姉妹
②相続放棄したもの
③相続欠格者
(相続人の欠格事由)
第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
④相続人として排除された人
(推定相続人の廃除)
第892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
遺言者が④を使えば財産を与えたくない相続人の遺留分を封殺することができますが、実務上、家庭裁判所が廃除を認めるハードルは高いものとなっております。
また廃除の事実は戸籍謄本に記録されます。
戸籍法第97条
第六十三条第一項の規定は、推定相続人の廃除又は廃除取消の裁判が確定した場合において、その裁判を請求した者にこれを準用する。
第63条
認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
戸籍法施行規則
第35条
次の各号に掲げる事項は、当該各号に規定する者の身分事項欄にこれを記載しなければならない。
八 推定相続人の廃除に関する事項については、廃除された者
遺留分制度は法律改正がなされ、従前は遺留分減殺請求権を行使した場合、その侵害行為自体が無効として扱われていましたが、改正後は金銭請求権を行使することができるというシステムに変貌しました。
不動産に対する行使も容易となるため、紛争防止の観点からは相続人当人どおしで話し合いができれば一番いいことだと思います。
遺留分の存在を秘したりすることはかえって紛争の火種になりかねません。
一度専門家にご相談されることをお勧めします。
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第九章 遺留分
(遺留分の帰属及びその割合)
第1042条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第1043条
遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第1044条
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
第1045条
負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
(遺留分侵害額の請求)
第1046条
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
(受遺者又は受贈者の負担額)
第1047条
受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2 第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
(遺留分の放棄)
第1049条
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
居住建物所有者は配偶者に対し配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。
登記することができる権利として「配偶者居住権」が新設され登記事項は「存続期間」及び「第三者に居住建物の使用または収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め」です。(不動産登記法第3条9号、81条の2)
登記手続きは原則通り共同申請となります。遺言であっても当然には配偶者が単独で申請することはできません。(遺言執行者が配偶者であれば従前どおり登記権利者兼登記義務者して可能)審判手続で確定したものについては、登記義務の履行を命ずる審判を取得すれば単独で申請することができます。
登記は当然に第三者に対する対抗要件です。
つまり登記を済ませておかなければ、建物が売却され、見ず知らずの第三者に渡ってしまったときは配偶者居住権を主張できず相手方の明け渡し請求に対し配偶者は建物を出ていかなければなりません。
また登記を済ませれば、所有権者と同様に建物について妨害排除請求権、返還請求権を行使することができます。
善管注意義務などは配偶者短期居住権と同様です。
なお、配偶者は居住建物の通常の必要費を負担しなければなりません。
つまり、固定資産税や居住にあたって通常発生する必要費は配偶者が負担しなければなりません。
これ以外の非日常的な必要費(例えば災害による修繕費)や有益費(例えばリフォーム代)はその価格が現存する場合に限り、配偶者は建物所有者に対して償還請求することができます。(第196条)払った分を返して下さいと言えるということです。
最後に 配偶者居住権の消滅について
相続後に配偶者がすぐに高齢者施設等に入所することとなったときなど、居住権を現金化するためには建物所有者に買取を要求するか、相続人の承諾を得て第三者に建物を賃貸借する方法しかありません。配偶者居住権の買取請求権は条文化されていないため、遺産分割協議で将来的な買取条件について別途合意するなどあらかじめ現金化のための策を講じておくとなお良いかと思います。
①配偶者が居住建物の用法遵守義務や善管注意義務に反した場合、居住建物の所有者は配偶者に対する意思表示により配偶者居住権を消滅させることができます。
②配偶者は居住建物が消滅し居住建物を返還するときは相続開始後に居住建物に付属させた物を収去する義務を負います。また、相続開始後に居住建物に生じた損傷を現状に回復する義務を負います。
③配偶者が死亡したときは配偶者居住権は消滅します。
④配偶者居住権の対象建物が滅失したときは配偶者居住権は消滅します。
以上、配偶者居住権についてでした。
今後この制度の需要が見込まれます。
お気軽にご相談ください。
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(配偶者居住権の登記等)
第1031条
居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
(不動産賃貸借の対抗力)
第605条
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第605条の4
不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
(配偶者による使用及び収益)
第1032条
配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
(居住建物の修繕等)
第1033条 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3 居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
(居住建物の費用の負担)
第1034条
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
(居住建物の返還等)
第1035条 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)
第1036条
第五百九十七条第一項及び第三項、第六百条、第六百十三条並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。
(期間満了等による使用貸借の終了)
第597条
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第600条
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(転貸の効果)
第613条
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第616条の2
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
行政機関の職員を名乗った者などからの怪しい電話や訪問、心当たりのない送信元からの怪しいメールなど、怪しい・おかしいと思うものには反応しないようにしましょう。
新型コロナウイルスに便乗した悪質な勧誘を行う業者には耳を貸さないようにしましょう。
不審に思った場合や、トラブルにあった場合は、最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。今後、新たな手口の勧誘が行われる可能性があります。少しでもおかしいと感じたら早めにご相談ください。
「給付金の手続きに暗証番号などが必要である」
「マスクを届けるので住所を教えてほしい」
「新薬開発できそうなので株や社債を買わないか」
「マスクを買えるという通販サイト」
これらは実際に消費生活センターに寄せられた相談事例です。
これから手口が巧妙化してくると思われますので、少しでもおかしいと感じた場合は身近な人や相談窓口に相談して下さい。
高齢化社会になり、配偶者が死亡した時点で他方配偶者が高齢になっているケースは少なくありません。残された配偶者のこれから人生において、住み慣れた家での生活と生活資金の確保は大切なテーマとなってきます。
今までの制度では、例えば被相続人の財産
自宅(評価2000万円)
預貯金(3000万円)
相続人
妻と子1人
である場合に
妻は自宅を相続し、預貯金についてもある程度相続したいと考えていたところ、子は法定相続分どおりの権利を主張し、話し合いの結果、法定相続分でしか折り合いがつかなかった場合、以下のとおりとなります。
妻→自宅2000万円+預貯金500万円
子→預貯金2500万円
住み慣れた自宅での生活を確保する代償として、相続できる現金が少なくなります。
また預貯金額を確保しようとするならば、今度は家を換価して分けるしかありません。
そこで新民法において、配偶者はその土地建物について処分や収益行為はできないが無償で建物を居住できるという配偶者居住権なる権利を新たに創設しました。所有権者とは別の概念です。つまり配偶者が自宅の権利を取得しなかったとしても、この権利があれば住むことだけはできるということです。
配偶者居住権は、居住権としての価値を算出し相続分を計算します。
具体的には
「建物敷地の現在価値ー負担付所有権の価値=配偶者居住権の価値」
負担付所有権の価値は建物の耐用年数、築年数、法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算出した上、これを現在価値に引き直して求めることができます。
例えば2000万円の現在価値がある土地建物につき、負担付所有権の価値を計算した結果1000万円だった場合は配偶者居住権の価値は1000万円になります。
先ほどの事例で、子が負担付(配偶者居住権付き)の所有権を取得する場合、
相続分は以下のとおりとなります。
妻→配偶者居住権(1000万円)+預貯金(1500万円)
子→土地建物の負担付き所有権(1000万円)+預貯金(1500万円)
この制度により、遺産争いなどにより、法定相続分どおりに計算しなければならない場合であっても配偶者の住み慣れた家での居住権を確保しつつ、配偶者におけるその他財産の相続についても大幅な目減りを防ぐことができます。
配偶者居住権が成立する要件とは👇👇
①被相続人が居住建物の名義を有していたこと。
ただし、被相続人死亡時において居住建物が配偶者以外の第三者との共有名義になっていた場合には適用できません。
②生存配偶者が被相続人死亡時にその居住建物に住んでいたこと
別居していた場合には適用できません。
③遺産分割協議で配偶者居住権を取得するとの合意が成立したとき、または配偶者居住権が遺贈または死因贈与の目的とされたとき
または
遺産分割の請求を受けた家庭裁判所は次の場合には、配偶者居住権を取得する旨の審判を行なうことができる。
1 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
2 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき
なお、配偶者居住権は生存配偶者の終身の間成立します。
次回に続きます
(配偶者居住権)
第1028条
被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
(審判による配偶者居住権の取得)
第1029条
遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
(配偶者居住権の存続期間)
第1030条
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
(配偶者居住権の登記等)
第1031条
居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
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当庁におきましては、令和2年1月29 日付けで標記資料を公表いたしました。
当該資料では、補聴器関連でお寄せ頂いている消費生活相談の内容なども勘案し、以下のような注意喚起事項を掲げています。
1 補聴器の購入の前に専門医に相談すべきであること。
2 補聴器は、「認定補聴器技能者」などの専門知識・技術を持った者に調整(フィッティング)してもらうことが効果的であり、専門知識・技術を持った者がいる販
売店も存在すること。
3 店舗で補聴器を購入した場合や通信販売の場合、どれだけ高額の商品であったとしても、基本的に「クーリング・オフ」は適用されないこと。
4 難聴の方は、耳が聞こえにくいことで、契約締結などの際に支障が生じることもあり得るため、周囲の方の支援が重要であること。
当庁といたしましては、これらの情報については、世代を問わず、一人でも多くの方々にお目通しいただくことが重要であると理解しております。
下記の資料もご覧ください。
補聴器の使用を検討中の皆様、そして、ご家族等の周囲の皆様へ。
(2020年1月29日)
(令和元年11月19日 日本経済新聞より抜粋)
( 配偶者による使用)
第1038条
配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第1039条
配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。
(居住建物の返還等)
第1040条
配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
(使用貸借等の規定の準用)
第1041条
第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。
(借主による収去等)(※改正民法(使用貸借))
第599条
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その 附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
(賃借人の原状回復義務)(※改正民法(賃貸借))
第621条
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない 。
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残された配偶者の居住権を確保するための法律です。
平成8年12月17日最高裁判例「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。」をベースに明文化し、さらに不動産が第三者に渡った場合も成立します。また判例とおりの推認がされないようなケースでも成立します。
(配偶者短期居住権)
第1037 条
配偶者は 、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
ー 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
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【概要】
①法人について破産手続が開始される。
↓
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「新元号移行にともない、法律が変わって銀行のキャッシュカードの変更手続きが必要です」と、うその情報を語ってキャッシュカードと暗証番号を記載した申込書を郵送させる手口だそうです。
(自筆証書遺言)
民法第968条
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
赤文字が新設された部分です。
今までは本人が全部手書きしなければなりませんでしたが、これからは財産目録という形で財産一覧表を作成する場合、その一覧表についてはワープロ打ちしたものや、財産が特定できる資料のコピーを用いることができるようになります。
具体例👇
これまでは、、、
私はBに対し下記の預金と不動産と株式を相続させる。
〇〇銀行△△支店 総合口座 口座番号××××××××××
〇〇県△△市〇番地〇の土地
〇〇社の普通株式△△株
私はCに対し下記の預金と不動産を相続させる。
〇〇銀行△△支店 総合口座 口座番号××××××××××
〇〇県△△市〇番地〇の土地
これら全部を手書きしなければなりませんでした。
たくさんあればあるほど大変です。記載ミスも増えます。
これからは、、、
私はBに対し下記の預金と不動産を相続させる。
別紙財産目録の1.の預金
別紙財産目録の3.の不動産
別紙財産目録の5.の普通株式
私はCに対し下記の預金と不動産を相続させる。
別紙財産目録の2.の預金
別紙財産目録の4.の不動産
と手書きで記載。
別紙財産目録は、パソコンで記載したもの・通帳コピー・登記簿謄本・評価証明書などを用いて作ることができます。
財産が多岐にわたるとき、各相続人に個別に振り分けたい場合には、楽になると思われます。
なお財産目録には各ページごとに署名、押印が必要です。
各ページ間の契印は不要です。
また、財産目録に押す印鑑は手書き部分の印鑑と異なっても大丈夫です。
この2点は偽造防止の観点からは、危険が伴うのではないかとの指摘もありますが、今回の上記民法改正が遺言書作成の促進を目的とするなら方式を厳格化し無効な遺言書が増えるよりも、簡素化して少しでも楽に作成できるようにという趣旨から上記2点が許容されたと思われます。
また、新設される「法務局における自筆証書遺言の保管制度」もあることから、こちらと併せて利用することも想定していると思われます。
遺言書の保管制度はこちら↓をクリック
なお、法律の施行日は
遺言書方式の緩和→2019年1月13日
遺言書の保管→2020年7月10日
です。これより前の日では適用できませんのでご注意下さい。
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登録免許税の納付方法は、登記手続きであれば、登記の申請用紙と一緒に収入印紙を貼りつけて行います。
主な税額はこちら👇👇
減税が受けられるものや、非課税の場合もあります。
詳しくはお問い合わせください。
実際の税額計算は、「課税標準金額」から導き出します。
不動産登記であれば、固定資産評価額を用いるわけですが、地目や面積によって再計算しなければならない場合もあり、なかなか複雑な場合もあります。
実際の事例から~
【お題】
土地の登記簿は宅地、評価証明書は現況が雑種地となっていますが、今回建物を新築して保存登記と土地の移転登記を連件で申請する場合でも、その土地の評価額のままで課税価格を算出してさしつかえないのでしょうか。
【回答】
評価証明書に登記簿宅地、現況雑種地として記載してあれば、原則として、評価額でそのまま計算してさしつかえありません。というのは、不動産の表示が評価証明書と登記簿とで相違する場合でも、固定資産課税台帳に評価額を登録後に、地目の変更登記がなされたときなどにかぎり、明白な特別の事情があるものとして、登記官の認定する価格によるとされているからです。このような特別な事情がない限り、評価額でそのまま算出できます。(昭和42.7.22民事甲第2121号 参照)
実際の計算では、このように細かいところもチェックしなければなりません。。。
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資産総額の変更登記手続きが必要な法人は、、
・医療法人
・社会福祉法人
・学校法人
・特定非営利活動法人(NPO法人)
・信用保証協会
・委託者保護基金
・原子力発電環境整備機構
・更生保護法人
・商品先物取引協会
・職業訓練法人
・投資者保護基金
・認可金融商品取引業協会
・保険契約者保護機構
・貸金業協会
資産の総額とは「積極財産から消極財産を控除した純資産」です(法務省民事局回答)。
法人の債務の担保となるべき資産額を公示することによって、法人の債権者が資産を把握できるよう債権者保護を目的としています。
この登記手続きは、事業年度末日から3か月以内に行わなければなりません。(組合等登記令第3条)
また、毎年行う必要があります。
定款の変更は不要です。
なお、NPO法人については、平成30年10月から改正NPO法が施行されます。
詳しくは下記リンクをご覧下さい。
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更新料の法的な解釈としては、 「一般に賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するもの」と解されています。(平成23年最高裁判例)
すなわち、更新料の支払義務に関する特約は有効です。
なお、個人と不動産業者が契約を交わす場合は、消費者契約法が適用されます。
消費者契約法第10条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
上記裁判ではどのような場合に、消費者契約法10条に抵触するかを判断しています。👇
「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である」
つまり、
①更新料を具体的に定めているか
②不当に高額ではないか
がポイントになります。
①について、、、
金額につき、あからさまに不明瞭なケースはあまりないかと思いますが、更新がいつ起こり、その後の契約期間はどうなるのかについては注意が必要です。即ち、更新料は、ある一定期間経過するごとに払う必要があるのかどうか。。。
借地借家法第26条
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
第28条
建物の賃貸人による第26条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
②について、、、
額の多寡について有効無効の判断は、上記の法的な性質の解釈に反しない範囲内でケースバイケースとなるでしょう。
例えば、「1年ごとに賃料1年分以上の更新料」とかでは「補充ないし前払い」の性質を有しているとは言えないのではないでしょうか。
ちなみに上記裁判では、「1年ごとに賃料2ヶ月分の更新料」について有効であると判断しています。
賃貸人には賃貸人の事情があり、賃借人にもそれぞれの事情があります。
契約書の条項については、お互い納得するかたちで不明瞭なものがないよう、また信頼関係が築けるように心がけることが大切です。
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不動産の名義変更など←クリック
【事例】
事業を行っているAさんは自己所有の不動産を担保として銀行から運転資金を借り入れ、根抵当権を設定しました。
その後Aさんが亡くなり、相続人間の話し合いで相続人の一人であるBさんが事業を引き継ぎ、Aさんの不動産と負債も相続することを決めました。Bさんは同銀行と引き続き取引をしたいと考えています。
この場合に必要となる登記は?👇👇
①Bさん名義とする所有権の相続登記を行う
↓
②相続を原因とした根抵当権の債務者変更登記を行う
↓
③指定債務者の合意の登記を行う
↓
④Bさんが債務を引き受けた債権を担保させるため、債権の範囲の変更登記を行う
これによって、銀行さんサイドは、引き続き担保をとることができ、安心して取引を継続することができます。
(根抵当権者又は債務者の相続)
民法第398条の8
元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
2 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3 第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。
4 第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。
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破産手続きではすべての財産が没収されるというわけでなく、破産法にしたがって、「換価すべき財産」と「残すことができる財産」とに区別されます。
破産法第34条
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。以下略
平成28年4月28日、上記2に当てはまるか疑義のある債権につき最高裁判所で判断が下されました。
【概略】
破産者Aさん、その息子Bさん。(簡略化しています)
1.平成23年、BさんはAさんを受取人とする生命保険を契約
2.平成24年3月、Aさんが破産手続開始決定
3.平成24年4月、Bさんが死亡
4.平成24年5月、Aさんが保険金請求手続き・保険金受領
【論点】
破産手続開始決定後の当該受領保険金は、第34条2項の「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」といえるか? すなわち債務者の手元に残せるのか。
【結論】
破産法第34条2項に該当するものとして、破産財団に属すると解するのが相当である。つまり債権者に配当するための換価すべき財産として債務者の手元には残せない。
以下判例から大事な箇所を引用しています。
3 原審は,本件保険金等請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手 続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものと して,本件各破産財団に属することになるから,上告人Y1が本件金員を費消したことは,上告人Y1において本件金員を法律上の原因なくして利得するものであ り,また,上告人Y1が本件金員のうち800万円を費消したことについて,上告 人Y2に弁護士としての注意義務違反が認められるとして,被上告人らの本訴請求 のうち上告人Y1に対する請求を認容するとともに上告人Y2に対する請求を一部 認容し,上告人Y1の反訴請求を棄却すべきものとした。
4 所論は,第三者のためにする生命保険契約(生命共済契約を含む。以下同 じ。)において,死亡保険金受取人の請求権は,被保険者が死亡したときに初めて 生ずるものであり,被保険者が死亡する前に上記死亡保険金受取人が有しているの は,権利ではなく期待的利益にすぎないにもかかわらず,本件保険金等請求権が本 件各破産財団に属するとした原審の認定判断に法令の解釈適用の誤りがあるという ものである。
5 第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立に より,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保 険金請求権を取得するものと解されるところ(最高裁昭和36年(オ)第1028 号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照),この請求権は,被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって,破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。
破産手続き開始決定後の原因に基づき取得される財産については自由財産であるところ、今回の請求権は破産開始前の将来の請求権として破産法第34条2項に該当するものとした判断です。
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この遺言は公証役場において公証人の関与のもとに作成されます。
そのため公証人に遺言書の中身を見られることになりますが、公証人にはもちろん守秘義務がありますので安心です。
自書での遺言と比べてメリットは👇👇
①法律に精通している公証人のチェックを受けることで、法的な手続不備を回避できる
遺言は要件不備で無効となることが一番残念です。せっかく思いを込めて書いたのに無効であっては何にもなりません。
②紛失の恐れがない、改ざんの恐れがない
原本は公証役場に保管されます。保管される期間は法律上20年間ですが公証役場ごとの実務上の取り扱いがあります。
当県では、生存している間は保管すべきとのことから遺言者が130歳になるくらいまで保管するそうです。
公証役場に保管されるので、原本を改ざんされる心配もありません。
②公文書として証拠力が高い
遺言書の内容や、遺言能力(判断能力ある自分の意思で遺言書を書いたといえるか)に争いが生じたとき、自筆証書遺言よりも証拠力が高いといえます。公正証書遺言は証人2人の立会が必ず必要であることもプラスに働きます。
もっとも本人の判断能力については、法律専門家などが証人となったケースでも判断能力が否定された裁判例もありケースバイケースです。
すなわち「人間誰しも衰える」と考えるならば、遺言を残したいのであれば早めに作るということが大切であると考えます。
③検認が必要ない
民法第1004条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
④字が書けない、耳が聞こえない、口がきけない場合などでも作ることができる
民法第969条
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人2人以上の立会いがあること。
なお、入院等で外出が困難な場合は、公証人に出張をお願することもできます。(出張料が必要)
デメリットとしては
①費用がかかる
②手間がかかる
という点でしょうか。
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何世代も前の名義となっている不動産を現在の名義とするのは厄介な作業です。
何世代も前の名義でとまっている名義変更の相談事例はとても多いです。地方は不動産事情として多いのではないでしょうか。
未登記建物も多く、また昔は契約書等で納税義務者変更が可能だったこともあり故人の名寄帳を見てみるとカオスな状況であったりします。(何世代も前の名義で止まってたり、よくわからない人名義となったままの不動産を管理、納税していたり・・)
資産価値が低廉であると売ることもないし相続もしたがらない、、そういった理由で放置されていきます。
そして月日が流れその土地に家を建てたくなった、、、管理も大変だし買い手が見つかったので売却しよう、、、権利関係をはっきりさせたい、、、
専門家に名義変更の相談をすると、時間も費用も掛かることの説明を受けること必至です。
理由は相続人の数が膨れ上がるからです。
「相続分」というのは次の世代にも承継されます。
数が増えれば増えるほど、法務局に提出しなければならない戸籍謄本も多くなり、さらに相続人の中には名義変更に同意しない者も現れたりします。
そうすると当事者間の話合いのケリをつけるため、裁判所で行われる「遺産分割調停」や「裁判」を利用しなければならなくなってしまいます。調停も裁判もパッと終わる代物ではありません。
時間も費用も掛かってしまいます。
また、最近の相談で多い事例として納税義務の問題があります。誰が義務を負うのか明確にするためにも早めに名義を変えていたほうがいいのかなと思います。
法務省からのご案内です👇
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ご依頼、ご相談頂いた方におかれましては大変ありがとうございました。
また各関係者の方々につきましては、お疲れさまでした。
そしてありがとうございました。
先日26日は事務所内輪での忘年会@自宅ですき焼きでした。
先週15日は、忘年会でした。
場所は枕崎市恵比寿町にある「魚処まんぼう」さん。
魚料理がすごくおいしいし、鹿籠豚を使った料理も最高においしいんです。
枕崎名産のかつお料理もいいんです!
「相続放棄」とは
(相続の放棄の効力)
民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
つまり、お亡くなりになった方の相続関係については離脱することになります。
ただし、そもそも相続財産として構成されないもの、、例えば生命保険金は保険契約の約旨に従って契約の対価として、指定された受取人に支払われるものであるので、相続財産ではなく、保険金の受取人となることができます。祭祀財産関係についても同様です。
「相続放棄をして借金の返済をせずに済む」
債務関係についてクローズアップされがちですが、上記のとおり、相続人ではなくなるためプラスの財産についても権利がなくなります。
不動産についても預金についても引き継ぐことができないということです。
相続手続きは様々な事情を把握しながらどの選択をするのがいいか判断していきます。
さらに相続放棄の大きなポイントは👇👇
➀被相続人の生存中は相続放棄手続きはできない。(第915条)
生存中に放棄の意思を示したとしても、書面化しても、無効です。
②相続放棄は亡くなったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立書を提出することによって行う。(第915条)
相続人間の話し合いなどで発せられる「相続を放棄する」というような一般的な用語のものは遺産分割協議中での一事情または相続分の譲渡などであり、民法の定める相続放棄手続きではありませんので注意が必要です。
3か月は原則であり、例外もあります。
③手続き終了後は撤回できない。(第919条)
騙されたり脅されて行った場合を除きます。
相続放棄についての概略でした。
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「なにかの手続きをとらないと、財産がとられるぞ」と煽って金品をだまし取る架空請求のハガキですね。
法律職に携わっている人から見ると、訴訟手続きの流れや管轄もめちゃくちゃな支離滅裂文書で送られてくるはずのないものであり、すぐに無視できますが受け取った人によっては不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
実際この件について知人は身に覚えがないので詐欺だろうと思いつつも、完全に無視していいものなのか確信が持てないでいるようでした。
このようなとき、大切なことは誰かに相談することですね。
消費生活センターや消費者問題のためのNPO法人など公益機関もたくさんありますので、このような機関に気軽に相談するのも有益です。
このことは労働問題や他の法律問題についても同様です。
なかなか焦るといい考えもでてこないので、落ち着きましょう。
個人事業主として商売を始めたが、規模が大きくなってきたので税務面や会計面で法人化を考えている、、あるいは取引の要件として法人格を取得しなければならない、、
など理由は様様ですが、このような動機で会社設立のご相談に来られる方はたくさんいらっしゃいます。
会社化すると経費として計上できる範囲が広がります。そして社会保険や法人住民税を考えなければなりません。その他にもいろいろとメリットデメリットありますので、もしお悩みの際は専門職にアドバイスを受けたほうがいいかと思います。
法人格とひとえにいっても法律に規定されている法人格の種類はたくさんあります。
株式会社が一番メジャーですが、ここでは合同会社についての概要をお伝えします。
ビジネスでの屋号はそのまま使用して法人格だけ取得したいという方にはうってつけではないでしょうか。
①会社設立には法人登記手続きが必要だが、その費用を安く抑えることができる。
株式会社の半値ほどでできます。
②役員の任期がない。
株式会社だと最長でも10年の任期があり10年経つと役員を選びなおさなければなりません。もちろん同一人を選んでもOKですが、いづれにせよ役員の登記手続きが必要となります。
任期がないことは役員の流動化を阻害するものですので、マイナスにも作用するかもしれませんが、そのようなことを考慮しない場合はメリットになるでしょう。
③税務面では株式会社とほぼかわらない。
④広く定款自治が認められる。
報酬配分も自由に決められます。
⑤「他者が株主として会社を動かす」というようなことがない。
合同会社の主体は会社法上の「社員」です。
⑥事業年度を自由に決定することができる。
これは個人事業主との比較になりますが、会社の決算期を自由に決めることができます。繁忙期を避けたり、会社の売り上げの波を考えて決めたり・・
合同会社は、株式会社よりも知名度は劣るかもしれません。
ただ、会社間の取引などでは実績や会社そのものを見るでしょうし、金融機関が融資を行う際も、事業計画や代表者の与信、自己資金額を判断材料にするのであって、会社形態での別はないとききます。
そして途中で合同会社から株式会社へ変更することもできます。(会社法第743条以下 組織変更)
会社を起こす際はニーズに合わせて、どの形態の法人格がいいか検討してみてください。
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以下のような実情であれば遺言書を作成したほうがいいかと思います。
・籍を入れていない内縁関係の相手がいる場合
法律上の婚姻関係でなければ、当然相続権はありませんのでその者は相続できないこととなります。
・再婚をしたが、前妻との間に子供がいる場合
その子供は当然相続人となります。秘匿している場合は混乱を生じさせます。
・子供がいない場合
相続権は親や兄弟姉妹に移ります。
配偶者と兄弟間での遺産分割協議が難航しそうな場合などは要注意です。
・会社経営者の場合
跡継ぎを誰にするかなど、揉める要素があるなら作成したほうがいいでしょう。
・各相続人の相続分や対象財産を決めたい場合
・相続人以外の人間や法人に財産を送りたい場合(遺贈)
・負債をかかえているため、相続人に相続放棄を促したい
・遺産の分割を禁止したい(法律上5年以内)
特定の財産についてのみも可
・自分の想いを伝えたい
人生の中で遺言について考えてみてはいかがでしょうか。
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従来の判例理論では、預金は可分債権であり相続により当然に分割され、各相続人に承継されるという取り扱いでした。
すなわち、遺産分割の対象財産ではありませんでした。
もっとも遺産分割の対象財産として預金を含める旨の合意があれば遺産分割の対象となりえました。家庭裁判所での実務上の運用でも認められておりました。
これまでは、理論上、被相続人の預金債権を相続した相続人は各々、銀行に対しその法定相続分に応じた払い戻し請求を行う事ができました。
もっとも銀行サイドの実務上での取扱いは、預金の払い戻しには相続人全員の印鑑が必要であることが多勢です。それでも払い戻しを必要とする特別な理由があれば法定相続分に応じた払い戻しにも対応する銀行が多かったと感じます。
そのような理論構成であったところ、
平成28年12月19日最高裁大法廷にて「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判事し、従来の判例が変更されました。
判断の理由は下記PDFをご覧ください。
この判断が与える影響としては、この裁判での事例のように遺産分割の対象財産となるのかならないかでは各相続人の最終的な相続分が異なることとなります。特に預金額が大きい場合は差が大きくなりえます。
また銀行実務としては、法定相続分に応じた払い戻し請求には応じなくなることが予想され、必ず遺産分割協議を経る必要があることになります。
このことにより、遺産分割協議が難航した場合に現金化できる時期が遅くなってしまい、相続関連の各種支払いができないという事態が生じかねません。
早期の現金化を望むのであれば、遺言書の作成など事前措置がますます大切です。
実務上での運用を注視していきます。
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民法第887条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第889条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
第900条
同順位相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
第901条
第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
自分が亡くなった場合を考えると、
下記順番のとおりになります。
①配偶者+子供 1/2:1/2
子供がいないなら(全ての直系卑属含めて)
↓
②配偶者+親 2/3:1/3
親がいないなら
↓
③配偶者+祖父母 2/3:1/3
祖父母がいないなら(全ての直系尊属含めて)
↓
③配偶者+兄弟姉妹 3/4:1/4
兄弟姉妹がいないなら
↓
④配偶者のみ
相続放棄や廃除、養子縁組、数次相続、等々法律的にいろいろなパターンがあるので、最終的には個別に検討しなければなりませんが、上記が基本パターンです。
上記は法が定める相続分の割合ですので、相続人みなさんの話し合い(遺産分割協議(民法第906条以下))で変更することができます。
割合を変更することもできますし、土地はAさん、預金はBさん、、といった分け方もできます。債務についても基本的には同じ考え方です。
相続後の処分方針、税金の観点、亡くなった方の御意思などいろいろな事情を勘案して、決めていくことになります。
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賃貸中のアパートが売却されて、買主に所有権が移ったときは賃貸契約の貸主の地位も買主に移ります。
この場合、賃貸契約の存続には借主の承諾や、借主への通知文書など不要です。
また、 契約内容は同一性をもって当事者に引き継がれます。
旧貸主の契約上、法律上の権利・義務は新貸主へ引き継がれます。(敷金の返還義務など。ただし未払い賃料で充当されない部分については旧賃貸人に引き継がれます。)
アパートオーナーとして借主に請求できること、、、例えば家賃の請求や、賃貸物の使用方法を定めることなどは、不動産の名義変更の登記を済ませなければ、自分自身がオーナーであることを借主に主張できず、請求することができません。(昭和49年3月19日の最高裁判例。この判例は登記を具備していない賃貸人から賃借人への賃料不払いに基づく契約解除を認めなかったものです。なお借主側が任意に新賃貸人を新オーナーと認めることは可能です。(最高裁判所裁判例))
先ほど賃貸人変更の通知文書は不要と記載しましたが、実際は、取引を円滑に進め、無用な混乱を避けるためにも通知をしておくべきでしょう。
賃料の振込み先など調整しないといけませんので、ご挨拶の意味合いでも通知しておくといいかと思います。
実務上は賃貸契約書を作り直すこともありえます。
その際に借主が気を付ける点としては、従前の契約と異なる点がないか確認しましょう。
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ブラックリストとは通称です。
割賦販売法第35条の3の36
経済産業大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その申請により、この節の定めるところにより特定信用情報提供等業務(特定信用情報の収集及び包括信用購入あつせん業者又は個別信用購入あつせん業者に対する特定信用情報の提供を行う業務をいう。以下同じ。)を行う者として、指定することができる。以下略
貸金業法第41条の13
内閣総理大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その申請により、この章の定めるところにより信用情報提供等業務を行う者として、指定することができる。以下略
これにより信用情報機関として指定をうけた業者は契約内容・支払状況・その他個人情報についての情報を保有することになります。
保証人となる方も保証人情報として、情報が保有されます。
貸金業者は業務上これらの情報を信用情報機関に提供しなければならず、そして信用情報機関を利用しなければなりません。(貸金業法第13条以下)
つまり与信の際の判断材料となるわけです。
いわゆるブラックリストに載るというのは、支払状況の「延滞」や「債務整理」という情報が信用情報機関に登録されることをいいます。
どのくらい支払いが遅れた場合に登録されるかは、貸金業者によって異なります。
半月ほど支払いがおくれれば登録される場合もあります。
そして登録されると、与信の判断材料となりますので、貸金業者によって異なりますが、新規の融資を受けられない可能性が出てきます。
情報は一生消えないわけではありません。
今現在、信用情報機関は3社ありますが、2社は5年以内、1社は10年以内の登録期間です。
ただし、その期間は登録されることとなった事実の発生時から計算しますので、例えば一度「延滞」して登録された後に再度「延滞」をした場合はその再延滞した時から5年以内の間、登録されることになります。
ご自身の信用情報については各信用情報機関に開示の請求をすることができます。詳しくは下記リンクをご覧下さい。
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大昔の抵当権は抵当権者の名義変更登記などされずに放置されている場合がほとんどです。
登記手続きは、原則として不動産に関して対立する当事者両名からの申請(この場合は抵当権者と抵当権設定者)が必要です。
しかしながら大昔の抵当権だと、抵当権者はどこにいるかわからないし、場合によっては死亡している状況です。
そこで登記法では要件を満たせば不動産の所有者だけで抵当権の抹消手続きを行うことができるようになっています。
その要件とは👇👇
①抵当権者が行方不明であること
②弁済期から20年経過していること
③債権額、利息などの全額について法務局の供託手続きをとること
②③は「弁済したことを証する証明書」があればその証明書でもかまいません。(ただし要件があります。)
③の供託金は当時との貨幣価値のギャップもあり、大した金額ではないことがほとんどです。
①②③のすべての証明資料を添付書面として、法務局に提出し登記手続を行います。
「住宅ローンが終わったから抵当権の抹消手続をしよう」というレベルの手続きではなく難しいです。
特に供託手続きは煩雑です。
当事務所でも過去にはイレギュラーなパターンのご依頼があり、法務局との打ち合わせを何回か行いました。
このようなケースは司法書士に任せてください。
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平成27年3月26日までは、代表取締役のうち1人は必ず日本に住所がなければなりませんでしたが、以降は代表取締役の全員につき日本に住所がなくてもOKとなりました。(法務省民商第29号)
これを受けて、取り扱いが変更となった部分について記載します。
①払込があったことを証する書面について(会社法第34条第1項)
(1)上記のように関係者全員が日本に住所を有しない外国人の場合は、出資先の預金口座の口座名義人として発起人及び代表取締役以外の第三者でも認められるようになりました。(出資についての受領権限に関する委任が必要)
(2)出資先の金融機関は日本の銀行であれば外国の支店でもOK(現地法人を除く)
外国銀行でも日本の支店であればOK
ネットバンキングもOK
②サイン証明書について
役員となる人の国籍の官憲(行政官庁)であれば、その官憲の所在地がどの国であってもサイン証明書の発行機関となりえます。
またやむを得ない事由(通達参照)の場合は、居住国の官憲が発行機関となりえますし、日本の公証役場も発行機関となりえます。
詳しくは通達をご覧下さい。
平成29年3月17日民商第41号通達
平成28年12月20日民商第179号通達
平成28年6月28日民商第100号通達
平成29年2月10日民商第16号依命通知
また、その他にも、
金融庁は外国企業が設立した内国法人や支店の銀行口座の開設が円滑に進められるよう、メガバンクに対し適切な体制を整備するよう要請を行いました。
在留資格に関する手続きのオンライン化も進めているようです。
法の趣旨を遵守したうえでどんどん利便性が向上するのはいいことだと思います。
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(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
この条文どおりです。意外と簡単です。
立法担当者の考えとして遺言を作る人の想いができるだけ実現されるようにと、このような簡素なものになりました。
ただし、その遺言書が本当に本人が書いたものかどうか、遺言書がたくさんあった場合にどれが最終的な意思なのかなどを確認することができ無用な争いがないようにするため、この方式に違反するものについては無効としています。
どのようなものが方式不備になるのかについては様々な判例があります。
氏名は戸籍上の氏名以外(例えばペンネームだとか)でも有効なのか?
内容の変更方法として、×を記載しただけで撤回や訂正になるのか?
などたくさんありますがここでは述べません。
裁判沙汰にならないよう、方式は丁寧に守りましょうということですね。
「丁寧に守る」ポイントは👇👇
①「自書する」
自分で「書く」ということです。
パソコンで作成する、
ビデオに録画する、
録音するなど、もちろんNGです。
代わりに誰かが代筆することもNGです。
②「日付」
平成〇年〇月〇日または20〇〇年〇月〇日の記載をします。
記載場所はわかりやすいところにかいておけばいいでしょう。
③「氏名」
戸籍上の住所氏名を記載しましょう。
④「印」
認印でかまいませんが、印影や押印意思についての争いをできるだけ避けるために実印を推奨いたします。
④その他
みすみす偽造の恐れがないよう、鉛筆や消えるペンは避けましょう。
丈夫な用紙に書いてちゃんと後世に残るようにしましょう。
他の人と共同で遺言書を作成することはできません。
第975条
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
夫婦や親子であっても別々に作りましょう。
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ブログを開設しました。
実務に携わるうえで感じ取ったこと、
勉強会、講習会で得た知識など、
みなさまの役に立つような法律ゴトを
中心にぼちぼち書こうかなと思っております。
更新頻度は低いかもです。ご了承ください!