前回お伝えしたように介護や扶養を行うことを遺産取得の条件とすることにはリスクがあります。
対策としては、
①不動産については母が住むことができるように母に取得させる、または配偶者居住権を設定する
②長男への遺産の取得方法として、「年に1回、10年にわたって取得させる」というように一度に取得させない
③母に一旦すべてを相続させ、母が随時、長男に贈与する。
などいろいろなスキームが考えられます。
本件のようなことは負担付遺贈でも起こりえます。すなわち、
父が「長男がそのすべてを相続する代わりに、母を扶養して老後が心配なものとならないように努力し身の回りの世話をすること」という遺言書を作成して亡くなった場合を考えてみると、
まず「身の回りの世話をする云々」は負担付遺贈で言うところの負担に該当する可能性が高いです。
そして負担付遺贈は負担を停止条件とする法律行為ではありませんので、負担を履行しなくても遺贈の効力は生じます。負担が履行されなくても遺贈は効力を生じ、遺贈の取消しの対象となるにすぎません(民法1027条)。
(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
第千二十七条 負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
そうすると他の相続人が遺贈の取消しをしたい場合に受贈者との間で負担の履行の有無について争いがあるときは、遺贈の取消しを行いたい相続人サイドから「受贈者による負担の未履行」を立証する必要があります。負担の内容が抽象的なものである場合には、立証が困難です。
例えば「面倒を見る」とひとえに言ってもどのように接すれば面倒を見たことになるのか。ただ会話をして食事を提供すれば面倒をみたことになるのか、介護施設を利用する行為は面倒をみていないことになるのか等々、裁判所の判断を仰がなければならないことになりかねません。
遺産分割や遺言書作成で介護・扶養問題を入れる際には、将来何が起きる可能性があるのか・どういったリスクがあるのかを予測することが大切です。
これは他の法律行為についてもいえます。
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負担に該当するかの参考判例
東京地判昭和59年8月31日判タ542号237頁
「被告は、原告がてると同居することは、負担付贈与契約における負担といえるものではない旨主張するが、従前居住していた住居を引き払つて、肝臓に持病を持つ老令者と同居し、その身の回りの世話をすることは、これをもつて負担付贈与契約における負担とみることに何ら支障のないものというべきである」
