同族会社では、株式所有者が死亡した場合に会社の経営権を誰が引き継ぐかで争いが生じることがあります。
株式は相続の対象です。死亡によってその相続人に移転し株主構成に変動が生じます。株式の承継者を誰にするかについて争いが起こりそうな場合は、遺言で株式を取得する者を決めたり、会社の定款を変更して相続人に対する売渡請求(会社法174条)を設定することによってある程度は争いを回避することができます。
※当事務所に株式会社会社設立を依頼される方には最初から会社法174条を原始定款に設定することを推奨しています。
株式は可分債権ではありませんので、被相続人の死亡によって相続人間の準共有となります。したがって遺産分割協議が成立する前では、相続株式の議決権行使を誰が行使するのか、配当をどのように受け取るのかなど、相続人間で争いが生じかねません。
会社の経営権が誰にあるのか確定しないと経営上の重要事項を決定できず対外的にも信用を失い経営にとって悪影響及ぼします。
したがって速やかに遺産分割を行う必要があります。
遺産分割で紛争が生じる場合において、相続人が同族会社の後継者であることは遺産分割においてその者が相続株式を単独で取得する理由となりえます。
裁判例でも「非公開会社の株式について、同会社は大半の株式を創業者の親族が保有しているという典型的な同族会社であり、その経営規模からすれば、経営の安定のためには、株主の分散を避けることが望ましいという事情があり、このような事情は、民法906条所定の「遺産に属する物又は権利の種類及び性質」「その他一切の事情」に当たるとして、相続人のうち、次期社長に就任予定である被相続人の長男に同株式を単独取得させるのが相当である(東京高裁平成26年3月20日決定)」と決定しています。
(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
第百七十四条 株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。
(売渡しの請求の決定)
第百七十五条 株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 次条第一項の規定による請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 前号の株式を有する者の氏名又は名称
2 前項第二号の者は、同項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、同号の者以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
(売渡しの請求)
第百七十六条 株式会社は、前条第一項各号に掲げる事項を定めたときは、同項第二号の者に対し、同項第一号の株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる。ただし、当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年を経過したときは、この限りでない。
2 前項の規定による請求は、その請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
3 株式会社は、いつでも、第一項の規定による請求を撤回することができる。
(売買価格の決定)
第百七十七条 前条第一項の規定による請求があった場合には、第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格は、株式会社と同項第二号の者との協議によって定める。
2 株式会社又は第百七十五条第一項第二号の者は、前条第一項の規定による請求があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。
3 裁判所は、前項の決定をするには、前条第一項の規定による請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
4 第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格とする。
5 第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、前条第一項の規定による請求は、その効力を失う。
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