養育費に関する民法が改正されました。この改正は令和8年5月までに施行されます。
これまでは養育費に関する合意文書が公正証書以外だった場合、相手が養育費の支払いを怠った時に相手の財産を差押えるためには、調停等の申立てを行ったうえで調停調書等(判決のようなもの)を得る必要がありました。
つまり①訴状(調停申立書)を作成し、②養育費の取り決めがあったこと・養育費支払いがないこと・相手方の住所地等を証拠として書面で準備し、③印紙代や切手代を調べ上げて、④裁判所に書類を提出し裁判所に行き審理を受ける という一般の方にとって大変な作業をする必要がありました。
今回の改正により、養育費債権に民法306条の先取特権が付与されます。
この改正により父母で作成した養育費の取り決めに関する文書さえあれば、公正証書や裁判を経ることなく相手の財産に対する差押えの手続きができるようになります。先取特権が付与される額は、今後法務省令で決まる予定です。
なお、改正法施行前に養育費の取り決めがされていた場合には改正法施行後に発生する養育費に限って法律適用されます。
民法
(一般の先取特権)(現行法)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
民事執行法
(不動産担保権の実行の開始)
法第百八十一条 不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
一 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法第七十五条の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
二 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
三 担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書
四 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書
(動産競売の要件)
第百九十条 動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。
一 債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合
二 債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合
三 債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第百九十二条において準用する第百二十三条第二項の規定による捜索に先立つて又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合
2 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第百二十三条第二項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。
(債権及びその他の財産権についての担保権の実行の要件等)
第百九十三条 第百四十三条に規定する債権及び第百六十七条第一項に規定する財産権(以下この項において「その他の財産権」という。)を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書(権利の移転について登記等を要するその他の財産権を目的とする担保権で一般の先取特権以外のものについては、第百八十一条第一項第一号から第三号まで、第二項又は第三項に規定する文書)が提出されたときに限り、開始する。担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失若しくは損傷又は目的物に対する物権の設定若しくは土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)による収用その他の行政処分により債務者が受けるべき金銭その他の物に対して民法その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。
2 前章第二節第四款第一目(第百四十六条第二項、第百五十二条及び第百五十三条を除く。)及び第百八十二条から第百八十四条までの規定は前項に規定する担保権の実行及び行使について、第百四十六条第二項、第百五十二条及び第百五十三条の規定は前項に規定する一般の先取特権の実行及び行使について準用する。