Aの夫Bには、前妻との子Dがいる。
Bは将来的にDに配慮せず、A及びAとの子Cに全財産を遺したい。
どうすればよいか?
遺言書を作成することを推奨します。
ただしGが遺留分侵害額請求権(民法1046条)を行使した場合、全財産というわけには行かない可能性がある。
遺留分に対抗する手続きとしては、廃除(892条)、欠格事由に該当(891条)、遺留分の放棄(1048条)が考えられるのでそれぞれ検討することを推奨します。
ただし現実ではDがよほどの悪人でない限りは適用は難しい。
従って遺言書作成の他に生前贈与を行っておくことも検討します。
まず贈与税についてであるが、自宅不動産を妻に贈与する場合は、婚姻期間が20年以上であれば配偶者控除の適用がある。
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(国税庁)
そのほかに暦年贈与も検討可能。
次に生前贈与の効果であるが、Bが10年以上生存すれば遺留分額に含まないこととすることができる。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第1043条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
従いまして生存中早めに対策をしておけば10年以上生きる確率が高くなりますので早めの相続対策を推奨します。
ただし当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、10年より前の贈与も遺留分算定の財産に含まれます。
「当事者双方が損害を加えることを知って」とは
①贈与時に贈与者及び受贈者が将来、贈与者の財産が増えることはないという認識をもっており②贈与財産が贈与当時の全体財産の1/2を超えている場合は、「損害を加えることを知って」と認定されると考えられています(大判昭和5年6月18日)。
上記は判例であり杓子定規にあてはめるのでなく事例ごとに個別具体的に検討が必要です。
なお、損害を加えることを知っていたかの立証責任は遺留分権利者が負担します。
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